調べ、足りない部分に気づき、条件を変えて調べ直す。エージェント型RAGは、人が自然に行っているこの過程をAIエージェントが担い、根拠の揃った答えを返します。
一度の検索では、実務の質問に答えきれない
RAG(検索拡張生成)は、質問に関係する文書を検索し、その内容をもとに生成AIが回答する仕組みです(Lewis et al., 2020)。社内の非公開情報と、AIの一般的な知識を組み合わせられるため、多くの企業で使われるようになりました。
しかし、一般的なRAGは「1回検索して、1回生成する」という固定の流れで動きます。そのため、次のような質問に弱くなります。
- 複数の情報を組み合わせる質問:「A製品の保証条件のうち、B地域の代理店経由の場合に異なる点は」のように、複数の文書をまたいで答える必要がある
- 質問が曖昧な場合:何を調べればよいかが、最初の検索結果を見るまで分からない
- 検索結果が不十分な場合:関係の薄い文書しか見つからなくても、そのまま回答を作ってしまう
一般的なRAGは、固定の手順に縛られ、複数の段階を踏む推論に必要な柔軟さに欠けると整理されています(Singh et al., 2025)。また、必要かどうかに関係なく決まった数の文書を検索することが、回答の質を下げることも指摘されています(Asai et al., 2023)。
仕組み
エージェント型RAGは、RAGの流れにAIエージェントを組み込み、検索の計画・実行・評価をエージェントが自律的に進める方式です。研究では、振り返り(リフレクション)、計画、ツールの利用、複数エージェントの協調が中核の要素とされています(Singh et al., 2025)。推論と行動を交互に行うReAct(Yao et al., 2023)のように、「考える→調べる→結果を見て考え直す」を繰り返す手法が土台になっています。
- 質問を理解し、計画を立てる:質問を分解し、「何が分かれば答えられるか」「どこを調べるべきか」を決めます。
- 検索する:ベクトル検索、ナレッジグラフによるグラフ検索、キーワード検索などを、目的に応じて使い分けます。必要に応じて、外部APIや計算ツールも使います。
- 評価する:検索結果が質問に十分か、矛盾がないかを確認します。
- 調べ直す:足りない情報があれば、条件や言い回しを変えて再検索します。
- 根拠が揃った時点で回答する:回答には出典を付け、どの文書のどこから導いたかを確認できるようにします。
導入効果
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複雑な質問に答えられる
複数の文書や条件をまたぐ質問、例外的なケースにも対応できます。
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浅い回答を防げる
情報が足りないまま答えるのではなく、足りないことに気づいて調べ直します。答えられない場合は、その旨と不足している情報を示せます。
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根拠を確認できる
出典を保持しているため、回答の妥当性を人が確かめられます。
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調べる手間が減る
担当者が複数のシステムを行き来して情報を集める作業を、エージェントが代わりに行います。
適用にあたって
- 検索と評価を繰り返すため、一度の検索で答える方式より、応答時間と処理コストが増えます。質問の難しさに応じて、繰り返しの上限や、一度の検索で済ませる経路を設計します。
- エージェントが使えるツールとデータの範囲は、利用者の権限に合わせて制限します。
関連する製品
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AIKNOW
エージェント型RAGを採用したナレッジ基盤(AIKNOW 2.0、2025年6月発表)。
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AIKNOW Answer
会話の状況と業務手順を踏まえて、次の行動を判断するAIオペレーター。
参考文献
- Lewis, P. et al. (2020). Retrieval-Augmented Generation for Knowledge-Intensive NLP Tasks. NeurIPS 2020. arXiv:2005.11401. https://arxiv.org/abs/2005.11401
- Singh, A. et al. (2025). Agentic Retrieval-Augmented Generation: A Survey on Agentic RAG. arXiv:2501.09136. https://arxiv.org/abs/2501.09136
- Asai, A. et al. (2023). Self-RAG: Learning to Retrieve, Generate, and Critique through Self-Reflection. arXiv:2310.11511. https://arxiv.org/abs/2310.11511
- Yao, S. et al. (2023). ReAct: Synergizing Reasoning and Acting in Language Models. ICLR 2023. arXiv:2210.03629. https://arxiv.org/abs/2210.03629