業務には、「何が正しいか」を示す知識と、「何をどの順で確認し、どう判断するか」を示す知識があります。Technica AIは、この2つを別のものとして構造化します。
2種類の知識を、同じ箱に入れている
「知っている」には2つの種類があることは、古くから指摘されてきました。哲学者ギルバート・ライルは、「事実を知っていること(knowing that)」と「やり方を知っていること(knowing how)」を区別しました(Ryle, 1949)。認知心理学でも、宣言的知識と手続き的知識は異なる仕組みで扱われると考えられています(Anderson, 1983)。
- Content Knowledge(内容の知識):製品仕様、料金、規程、FAQなど、「何であるか」の知識。文書に書かれ、定期的に更新されます。
- Process Knowledge(手順の知識):どの順で確認するか、どの条件で分岐するか、例外のときに誰へ引き継ぐか、といった「どう進めるか」の知識。その多くは人の頭の中と、実際の作業の順序の中にあります。
一般的なRAGは、この2つを区別せず、文書を一定の長さに切って検索します。すると、次のことが起きます。
- 手順書の一部だけが検索され、前提条件や分岐が抜けたまま回答される
- 「何を答えるか」は合っていても、「答える前に確認すべきこと」が飛ばされる
- 料金改定などで内容が変わるたびに、手順の中に埋め込まれた記述まで探して直す必要がある
仕組み
Technica AIは、2種類の知識を別々に構造化し、使うときに組み合わせます。
- 手順を、状態と分岐を持つ形にする:SOPや業務フローを、ステップ、確認事項、判断条件、分岐、例外、引き継ぎ条件に分けて構造化します。AIは「いまどのステップにいるか」を保持しながら進めます。
- 内容を、根拠として引ける形にする:FAQ、マニュアル、商品資料は、出典とともに検索できる単位に整理し、最新版に更新できるようにします。
- 手順から内容を参照する:手順の各ステップは、必要な内容の知識を「参照」します。内容が更新されても、手順を書き換える必要はありません。
- 言葉になっていない手順を引き出す:熟練者の判断や、通話ログに現れる例外対応のように、まだ文書になっていない手順を、対話や記録の分析から言語化します。
AIエージェントの研究でも、世界についての知識(意味記憶)と、行動のための知識(手続き記憶)を分けて設計する枠組みが提案されています(Sumers et al., 2024)。
AISECIとの関係
組織の知識創造を、暗黙知と形式知の相互変換として捉えたSECIモデル(Nonaka & Takeuchi, 1995)では、言葉にしにくい経験や判断を形式知に変える「表出化」が重要な段階です。手順の知識は、とくに暗黙知として人の中に残りやすい知識です。AISECIの暗黙知から形式知への変換は、この区別を前提に設計されています。
導入効果
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手順を再現できる
確認漏れや順序の誤りを防ぎ、担当者によるばらつきを抑えられます。
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内容を安全に更新できる
料金や規程が変わっても、内容の知識を更新するだけで、すべての手順に反映されます。
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AIの応対が業務になる
質問に答えるだけでなく、確認・判断・処理・引き継ぎまで、業務の流れに沿って進められます。
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熟練者の知識を残せる
これまで人に頼っていた「進め方」を、組織の知識として継承できます。
適用にあたって
- 最初に、対象業務のSOPとFAQがどこまで整っているかを確認します。SOPが不足している場合は、通話ログや熟練者へのヒアリングから手順を補います。
- 手順の知識は業務のルールそのものです。変更は、業務の責任者による承認を経て反映する運用を推奨します。
関連する製品
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AIKNOW Answer
SOPをProcess Knowledge、FAQ・マニュアルをContent Knowledgeとして構造化し、顧客応対に使います。
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AISECI
暗黙知を引き出し、形式知へ変換する知識創造の仕組み。
参考文献
- Ryle, G. (1949). The Concept of Mind. Hutchinson.(解説:Stanford Encyclopedia of Philosophy, "Knowledge How". https://plato.stanford.edu/entries/knowledge-how/ )
- Anderson, J. R. (1983). The Architecture of Cognition. Harvard University Press.
- Nonaka, I. & Takeuchi, H. (1995). The Knowledge-Creating Company. Oxford University Press.(邦訳『知識創造企業』東洋経済新報社, 1996)
- Sumers, T. R. et al. (2024). Cognitive Architectures for Language Agents. Transactions on Machine Learning Research. arXiv:2309.02427. https://arxiv.org/abs/2309.02427